ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「和音の正体」船橋三十子

音楽の本です。
アマチュアや中高生で、音楽が好きだけれど、あまり詳しいことは知らない、メロディーやリズムに関する本は多いけれど、和音に注目した本を読んだことがない、そんな人に向けられて書いた簡単な本でした。


私はこの本の章に「スクリャービンの「神秘和音」」というのがあったので、即買いしてしまったのですが、いやいや大変に勉強になりました。


和音と言っても、音2つでも和音ができますが、性格付けができないので、この本では3つの音で和音と言っています。その成り立ちや仕組み(例えば5度からは1度に行きたがるとか、4度からも1度に行きたがるとか)和音の性格(トニック、サブドミナント、ドミナント)のこととか、カデンツァの事とか、まあこの辺は楽典でうっすらやったことがあったからわかるんですが。そのあとからが面白い。


バロック時代の和音がどうだったかとか。通奏低音の話とか、バロックと古典派以後の音楽の決定的な違いとして、バロック時代にはクレシェンドやデクレッシェンドがなかったこととか!!(これで私のバッハの解釈がすとんと落ちた!やっぱそうか!)。
宮廷(雇われ)作曲家から職業作曲家(職業作曲家の初めはベートーヴェンと言われています。オフィシャルなところにいかなくて良かったから、あのくるくるカツラをかぶっておらず、地毛だったんだそうです)、なんていう話も書かれていました。音楽史の勉強にもなりますね。


和声の崩壊、無調音楽の時代を経て、トーン、クラスターまで。


その次に、各作曲家が好きだった和音。その第一番目にスクリャービンが出てきたんですね。私は4度の重ね合わせが好きな人としか認識していなかったのですが、神秘和音とは、下から増四度、減4度、増四度、完全四度、完全四度の6音で成り立つ、特別な響きのある和音なのです。
ド#ファ#シ♭ミラレ、この和音はまさに後期ソナタにも頻繁に出てきましたし、スクリャービンが完成させなかったけれど後進の人が完成させた「神秘劇」のほとんどがこの和音で書かれています。くどいくらいに出てきます。ピアノソナタの10番によく出てきます。


他にも、ラフマニノフの好きな和音、ナポリの和音、ドリアの和音、ピカルディの和音、トリスタン和音(これを体感した時の感動!!)それから国ごとの和音について。


その後は、楽典的なことが乗っていました。中学生くらいにでもわかるものです。とても読みやすいです。音楽おたくの人で譜面が読める人に、中高生くらいでオタクな音楽マニアに、そして大人の私のようなマニアを超えてその向こうに突き抜けちゃった人の知識の再確認のために、とってもいい本です。これも衝動買いして2日くらいで読んでしまいました。


音楽史のことも書いてあって、対位法もチラリとありました。この辺をよんでも、私がパリで学んだ音楽史がぶわーーとよみがえってきて、教会音楽を感じた経験などが思い出されました。


とても価値ある本です。1980円です。
お勧め。


次は北欧神話の本です。

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