ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「東京物語」小津安二郎

懐かしの昭和映画シリーズ(私が勝手にシリーズ化)第4弾は、小津監督の名作「東京物語」でした。


日本の原風景ともいえる尾道の景色から淡々と始まり、淡々と老夫婦が上京し、淡々と東京生活を送り、子供たちに邪険にされつつも、それなりに東京ライフを満喫?したもののすぐに尾道に帰ってしまい、尾道でおばあさんが危篤になり、淡々と家族がそれぞれの仕事を休んで東京や大阪から集まり、淡々とお葬式、淡々とその事後処理、淡々とその後の生活、そんな感じの、淡々とした映画だったように思います。


ところどころに、人生の教訓になるような言葉がぽろぽろ出てきて、小津安二郎はこめたいメッセージを、文章でも発するし、風景や、淡々とした日常描写からも、発するんだなあと、今まで見たほかの昭和映画よりも多彩さを感じました。


いい役だなと思ったのは、なくなった次男のお嫁さん。とってもいい人で、東京でみんなに邪険にされて行き場のなくなった老夫婦のおばあさんのほうを泊めてくれてよくしてくれたのに、お葬式の後お爺さんに「あんたはいい人や」と言われて「私は本当はそんなにいい人間じゃないんですよ、それをお母様には申し上げられなくて」と答えてしまう謙虚さ。昭和の美徳だなと思ってしまいました。


何よりも主人公のおじいさんがいい味出してましたね。淡々と、奥さんがなくなろうとしているのに「そうか」で済ませてしまう。家族が帰ってしまうのでも「そうか」で。なんというか、これも日本ならではなんだろうなと思うのです。もっと家族に対して愛情を直接的に表現する外国とは異なり、これが家族への愛情の示し方なんでしょうね。この点、日本らしいというので、海外で小津の人気が高まった一因にもなっていると思います。


尾道の日本の原風景、東京の片隅、淡々と進む日常と非日常、そんなものが、なんだか心に温かさを湧き立たせてくれます。
小津作品を見たのは2回目で、一度はテレビ放送されていたものだったのですが(たぶん「東京物語」だったと思いますが)その時はあまりのつまらなさに途中でどこかに行ってしまいました。ちゃぶ台を囲った家族の映画なんて、サザエさん映画版みたいな感じがあって、若いころは面白みを感じなかったんです。
今では、心にしんしんと来るものがありますね。


いい年になったんだなと思います。
さてあと1日、なんの映画を見ようかな。


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