ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「近代科学の源流」伊東俊太郎

主に紀元後から14世紀くらいまでのヨーロッパ・アラブ社会の科学についてよく研究された本でした。書かれたのは1978年だからとても古いですが、歴史観が変わっていなければ、これで十分中世のキリスト教世界の科学の説明はできていると思います。当時、今もそうかもしれませんが、ギリシャに端を発する学問がこれだけ追跡された本はないのではないかと思います。


神秘主義→魔女狩りが中世後期近世に起こった→(あれやこれや)→じゃあ中世ってどんな時代(いまここ)
という経過でこの本を手に取りました。


そもそも科学の源流はギリシャにありました。神話を含む世界の在り方が研究されていたのがギリシャ。アリストテレスの哲学や世界観がギリシャ哲学・科学の主流でした。それが、キリスト教の成立以後のラテン世界には継承されず、アラブ世界のほうに継承されて、12世紀になり、ラテン世界がアラブ世界に残されたギリシャ古典を翻訳することで、ラテン世界に哲学や科学が入ってきて、そこから科学が発達し、やがてケプラーやコペルニクスや、ガリレオ、ニュートン、などの近代科学につながっていくのだそうです。


確かに中世ヨーロッパというのは学問的には「暗黒世代」と言われていました。学術はもっぱら閉鎖的な修道院でのみ発達しており、一般市民は宗教の統治の下で自由な思想を持つことは禁じられていました。ですが、その暗黒時代のキリスト教の中でもわずかに細々とギリシャの学問が伝えられていたことが明らかにされました。


本書の3分の1はアラブ社会での科学の伝播と発展を扱っていますが、特に医学に関しては、アラブ世界は、キリスト教とその周囲に会ったような迷信的な原因(病気は悪魔のせいだとか)ではなく、ちゃんと医学的な根拠をもって対処していたようです。意外ですね。アラブ社会のほうが今は停滞しているのに、7~10世紀くらいのアラブ世界はものっそ発達していたそうです。天文学などもそうです。


宇宙に関することで、天動説が信じられてきたといわれていますが、実はキリスト教社会でも9世紀には地動説が言われていて(金星と水星の移動を説明するため)、そのころそんな説を言った人は処刑されなかったんですよね。まだキリスト教が寛容だったからだと思います。


キリスト教がどんどん不寛容になっていき、厳しくなっていくのは、科学を「神の目線」での物事のとらえ方として逆輸入した後からではないかと思います。異端審問にしても、科学の逆輸入のころから頻繁になっているし。


それから、面白いことに、ギリシャ世界っていうのは、人生観が循環型だったんですね。死んだら生まれ変わる。キリスト教は一つの魂が生まれて死んで裁きの日に天国に迎えられるという思想(キリスト教だけではなくアブラハムの宗教)。最初のキリスト教は、ギリシャ哲学のいいところを取り入れたけれど、この点については「キリスト教が正しい」と言い張って循環型を認めなかったんだそうです。はー。頑固ですね。


それから、ギリシャの学問や、キリスト教以前の哲学が伝承されるのに、ネストリウス派やユダヤ人が大きな役割を果たしていることに驚きました。彼らはラテン世界から迫害されたので、アラブ世界に逃げた。アラブ世界では、お金さえ払えば宗教は変えなくていいので、その下で彼らは保護されて、学問も守られ、それがアラブの偉い人たちに広まって、科学が興隆するようになったそうです。


神秘主義に戻るには、私はギリシャ哲学のことやギリシャ神話のことを知らなさすぎます。この本はすらすら読めたけれど(正直文章がうまい!)ほかの哲学書になるともうお手上げになってしまうので、次はギリシャ哲学の本とギリシャ神話の本を読もうと思います。


平成最後の本は科学哲学の本でした。令和最初の本はギリシャ哲学かな?

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