「ボートの三人男」
10日もかかりましたが読みました(パソコンの修理をしたり学会の申し込みがあったりしてなかなか時間が取れませんで)。大変面白かったです。話の筋としては、3人の男と一匹の犬が、テムズ川をボートでさかのぼる珍道中なのですが、時々織り込まれた挿話にに、イギリス紳士の皮肉めいた生態が見られて、そしてイギリスらしい?道徳観や価値観が見られて、なるほどと思わずにはいられませんでした。
私は圧倒的にフランス文学を読んでいるので、こういう規律正しい紳士的態度というのは正直ピンと来なかったのですが、それがわかりやすくユーモラスに描かれているのがこの小説。
そして、イギリス紳士が案外と暴力的で荒っぽいということも、よくわかりました。直接は書かれていないけれど、罵詈雑言、あれやこれや、言いたいときはいうんだなあと思ってしまいました。フランス人のほうがそういう意味ではおとなしく、怒りは内部に向いていると思います。語彙的にも英語の人をののしる言葉はフランス語のそれより多い気がします。
何度も笑いました。罐詰をめぐっての努力、ドイツ人のコミックソングのくだり、テントの設営など思い出すだけでもにやけてしまいます。
そしてちょっと残念だったのが、私はイギリスの歴史に暗くて、どのタイミングでローマ人がやってきて、どのタイミングでサクソン人がやってきたのか、ぼんやりとしかわからないということです。ボートの旅の中で、各地を案内する記述もあるのですが、そこの面白さは歴史的背景を知っていればもっと面白く読めたんだろうなと思います。ボートから眺める場所の、その場所ごとに有名なものがあり、見ものだったり歴史的史跡があったりするのに、それを理解できなかったのはちょっと残念ですね。
最後の終わり方がまた面白いです。まるで、プーランクの曲の終わり方みたいです。