ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「悪霊」ドストエフスキー

これを読むのは3回目です。最初は何がなんやらわからなかったです。そのあと、「罪と罰」を読んで、ロシアの歴史をちょっと勉強して、2回目に読んだときは、「ひょっとして新しい時代への批判なのか?」と思ってしまいました。そして今回3回目です。


この物語は、多くの「二重」あるいは「対立」が隠されていると、2回目に思ったときに気が付きました。今回はそれをはっきり認識できました。


大きな二重性は、「伝統的ロシア」と「新しい時代のロシア」です。どっちからどっちにも行くことができない、ロシア民族の持っている土着の神様が、この二つを結び付けて離しません。ロシアの西洋化に対して、神や神の権威をつかさどる僧正を信頼するロシアもある。この二つがいい具合に重なり合っているんです。


これがわかったからと言って「悪霊」というのが何だったのかというのは私はますますわからなくなりました。最初に聖書の例の「豚に悪霊を移して崖から落としておぼれさせてしまう」話からすると、この豚は誰だったんだろう。ドストエフスキーが知人の手紙に書いたところでは、西洋から移入された無神論革命思想を悪魔に見立てて、それに憑かれたネチャーエフ=ピョートルその他は湖におぼれ死に(ピョートルは死にませんが)、悪霊が離れて癒えたロシアはイエスの足元に座しているというのです。


私はこれはたとえドストエフスキー本人が言っていたとしても信じられないのです。というかこの作家(たぶん訳者!)が読み切れなかったところがたくさんある。西洋から輸入されてきた無神論がロシアでどんな形をとって広まったのか。そもそも無神論というのはどういうことなのか、無神論=「悪霊」ではない、と思うのです。そんな簡単なものではないと思うのです。
じゃないと、「スタヴローギンの告白」は成り立たないのです。僧正に告白に行くというニコライの行動原理を考えると、彼は悪霊ではないし、悪霊の側に立ったこともないし、悪霊によって殺されたわけでもないです。彼の悪霊は、彼のとある罪に対する自分という悪霊なんです(それをきれいな良心の呵責とかいう言葉では表しきれないところがいいですよね!)。誰もがそういう悪霊を持っている、そういう示唆があるような気がして。


まあ話は逸れましたが、ほかにも二項対立がたくさんあるので、そういう視点で読んでみると面白いと思いますので紹介しておきます。


旧時代と新時代の対立(ステパン氏とピョートル)、これは詩人でもあり大学教授でもあったステパン氏の子供が、ほとんど狂言回しをやっていたピョートルであるというところが特徴的だと思っています。同じ感性を持っていながら、全く逆の方向に走る二人のうち、旧時代の父親はみじめに女友達(ずっと想い続けていた人)に生活させてもらい、彼女から手を切ったらおかしくなって死んでしまう。息子はどこかに逃げおおせる、しかも架空の巨大組織の手先ということで仲間を集って、殺人まで犯して(これはネチャーエフ事件に題材をとっています)。古いロシアの終わりと、新しいロシアの散逸、まるでこの後ロシアがたどる運命を暗示しているように思えるんですよね。


ピョートルとニコライという対立も見どころです。同じように旧時代の子供として同じ時に現れた二人ですが、罪の意識をどうとらえているか、二人は全く異なった経過をたどり、結論に行きつきます。この物語に二重性が認められるのはこの二人の(あえて二人の)主人公のおかげだと思います。主人公はニコライだけではないんですよね、彼は特に何もしていない。むしろ、善良なロシア人で、狂人と結婚してみたり(結婚したときはまだくるっていなかった、ただ醜悪のために身分の低い女性と結婚した)、人の婚約者を奪ってみて民衆に殺させてみたり(この民衆というのも一つこの物語を解くのに重要な役割を持っています)、「告白」に出てきた罪によって発生した悪霊に脅かされ、それがために冷静に正常な判断で自分の命を失う。これはそれまでのロシア的な感覚に近いんだと思います。詭弁を使って人を巻き込んで情報収集して情報操作して自分の有利な状況に持ち込もうとしていたピョートルとは対極をなしている、と思うのです。


まだまだ対比するところがたくさんありますが、書いていたら明日になってしまいそうなので、それはこの後、亀山先生の「謎解き「悪霊」」を読んでから、自分なりの見解を書きたいと思います。


「羞恥心」はキーワードですね。これの背後にキリスト教があるのが、多分原書を読めばわかるんでしょうけれど、日本人だったら世間に対する羞恥が羞恥心だけれど、この本で出てくる羞恥心というのは、たとえ無神論とはいえ、神に対する羞恥心なんだなと思ったりします。これは訳がちゃんと理解していなさそうな感じで、いまいち消化不良でした。


話が複雑化してしまっているのは、途中で大きな書き直しをしているかららしいです。人物描写がいちいち細かくて、ちょい役にまでも大変な説明がなされているのですが、人物相関図を書いてみると、分布図ができてきて、相互相関関係がわかってきて、大体2つの対立要素が多いので、x-y軸でクラスタリングできる感じです。


ということで、3週間くらいかかりましたが、面白かったー!


勉強は?忘れてたよ~~~でも就職するためには勉強が先でしょう???これから勉強します。


そうそう、薬を飲まないでいたのですが、シャンピリ感は、お米を食べるとなくなるのではなくて、じっとしているとなくなるようなのです。横になって読書していたら、薬を飲まなくても大丈夫でした。読書はできたのでうつうつしていたわけではなかったので、このまま離脱症状とうまく付き合って、減薬できていったらいいなと思っています。


明日は勉強。明日こそ勉強!就職するんだという強い意志を持って勉強!
あ、でもフランス語に行ってきます。帰りにカフェで勉強します。
明日こそは頑張ろう!


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