ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

聴く人と演奏する人の間にある高くて分厚い壁

まあ、簡単に言うと、鑑賞者は奏者が体験していることを、どんなに頑張っても体験できないということに尽きます。演奏者は世界を創造する苦しみや楽しみを経験し、鑑賞者が聴いていない音や神の声が聴こえているんです。


でも今日は私は鑑賞者をやります。神の声を知らない、演奏の奇跡を知らない、一般素人として感想を言ってみたいと思います。


今日は一日スクリャービンのピアノ曲を聞いていました(PCに接続するCD-DVDドライブが見つかったので、パソコンの音で聴いていました)。昨日届いたCD達です。


シドンのCDがスクリャービンのソナタ全集+番号のついていないソナタ(初期の作品)が入って3枚、アシュケナージの小品集とウゴルスキのソナタ集の、合計5枚、5時間かけてじっくり聴いていました。


アシュケナージの小品集「焔に向かって」は全くすばらしかったです。スクリャービン生誕100年を記念して録音されたそうです。あのちっちゃい気さくなおっさんからこんな素晴らしい音楽が生まれてくるとは全然考えられません。まあでも、私にとってアシュケナージは教科書であり、理想であり、最終的にアシュケナージのまねができたらそれでいいと思って追いかけてきたので、フィルターがかかっているかもしれませんが、それにしても、聞いていて楽しかったです。初期から後期まで網羅されていて、タイトルになっている「焔に向かって」については、私はほかの人の演奏を聴いて一度も素敵だと思ったことがないのですが、アシュケナージを聴いて初めて素晴らしい曲だと思いました。
他にもスクリャービン後期の詩曲のわかりにくい曲を、素敵な響きで聴かせてくれました。複雑でわかりにくい曲が多いのですが、とても魅力がありました。また中期の小品も、スクリャービンらしい明るさ、輝かしい雰囲気を良く出しているなと思いました。聞いていて楽しくなるCDでした。


次にウゴルスキのソナタ2,3,5,9番を聞きました。これは2000年録音だそうで、いい録音なんだと思います。多分最初からCD用に録音されたものだから、かなり広範囲の周波数を拾っているんだと思うのですが。高い音が響きすぎて明確さに欠ける感じでした。2番とか超つまらなかったです。2番はわかりやすいソナタのはずですが、わんわんいってて良くわからなかったです。3番の3楽章も素敵な曲なのに、旋律ラインがはっきり聞こえませんでした。演奏は非常に丁寧でミスがなく雑なところがなく、なんというかいつも同じテンションですね。ある意味、洗練されすぎているんじゃないかと思います。スクリャービンを流水できれいに洗い流したらこんな感じの音楽になるんだろうな。それとも単にパソコンで聴いていたからこんな感じになってしまったんだろうか。


対照的なのがシドンの全集。大雑把で、ミスタッチもあるし、粗削りなのですが、ちゃんと盛り上がるところで盛り上がって、すごくわかりやすかったです。この人の全集は1970年前後に録音されたもので、もともとはレコードでした。それをCDにしているので、超音波的な音はカットされているからでしょうか、聞こえやすいのかもしれません。ただ、4番はいただけない。まるで指の弱い人がベートーヴェンのソナタを弾くような感じで淡々と弾いていらっしゃる。私が4番が特別好きだから言うんですけど、4番はもっと明るい、鍵盤上の運動会だと思うのです。それがしっとりおっとりしちゃって、多分初めてシドンの4番を聞いた人の心には何も残らないと思います。前期ソナタは素晴らしかったですね。迫力があって、これならだれからも「スクリャービンはロシアのショパン」なんて言わせない、重みのある演奏でした。後期はもうちょっと明確さが欲しかったです。アシュケナージが一曲大体10分くらいで弾くのに対して、この人は13分14分かけてじっくりうたって弾いていました。せかされている感がなくて落ち着いて聞けました。番号のついていないソナタや幻想曲も入っていて、3枚で聴きごたえがあり、スクリャービンの初期から後期までじっくり堪能することができました。


まだほかにもいろんな人の録音があるので、今月はもう買いませんが、生誕150周年の今年、ぼちぼち買い集めていこうと思います。うちにあるのも何枚かあるので改めて聞きなおしたいと思います。聴く人になり切ろうと思います。


ということでここからは高い厚い壁を越えて演奏する人に戻ります。


昨日注文したモーツアルトのピアノとヴァイオリンのためのソナタ3巻の楽譜が届きました。朝8時半に届いたのです。驚き。日曜の早朝からですか。
ベーレンライター版でURTEXTと書かれていませんでした。なので、「それじゃない感」のあるスラーが多かったです。アーティキュレーションが違うともはやそれはドイツ語の発音ではなくなり、モーツアルトではなくなってしまうので、もう世の中からURTEXT以外は消えたほうが私はいいと思うのですが、オリジナリティを出したいんでしょうか、ほかの出版社と差をつけたいのでしょうか、なぜかこういうものが出回ってます。


幸い、ペトルッチのライブラリに原典版らしきものがあるので(それでも完全に信用していません、私の教わってきたモーツアルトを信じています)、参考にしながら書き直しです。まあいいんです、製本されていれば、それはそれで価値がある。それに新しい解釈という可能性もあります。


ちなみに神戸楽譜さんからの配送は、郵送じゃなくて宅急便になっていました。送料300円。アマゾンで良く探したら同じ楽譜が同じ値段で出ていて、こちらは送料無し。早まったなと、良く探せばよかったなと。探し方が悪かったんです、「Mozart Violinsonatas」で探したからいけなかった。これはあくまで「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」であって、「Sonatas for Piano and Violin」で探さないと行けなかったんですね。初歩的なミスです。


雪の予報、私の地方20センチだそうです。うーん。また早めに家を出ないといけませんね。自転車で駅まで行けません。とっととご飯食べてピアノやってフランス語やってお風呂入ろう。

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