ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

絶対音感と歌の話

前に書いたかもしれませんが。


私はピアノを始めたのは小学校3年生からなんですが、その時は、絶対音感を持っていませんでした。ただ、姉がピアノをやっていたので、それを聞いて覚えていて、真似して弾くことはできていました。


ピアノのレッスンと一緒にソルフェージュと聴音のレッスンもありました。ソルフェージュは楽譜にかかれた旋律を歌うお稽古。聴音は先生が弾いた旋律を楽譜に書き写す訓練。最初に習いに行ったときには、マグネットを使った「音符の読み方」とか、楽譜の読み方とか、そんなことをやっていました。


幸い、最初から両手でピアノを弾くことができたし、楽譜が読めたので、ほどなくソルフェージュと聴音が始まりました。ソルフェージュは「こどものソルフェージュ」という本で、毎回宿題に出される短い旋律を先生の前で歌ってみせます。ですが、聴音は、絶対音感がなかったからできなかったのです。


ピアノを習い始めた当初、私は絶対音感がなかったんです。
先生が音を弾くと、その音が何の音なのかを答えられませんでした。最初にドの音を弾いてもらうと、次に弾く音の名前は答えられました。相対音感はあったようです。


それが、今やA=442Hz固定の完全な絶対音感所持者です。441でも440でも、ましてやバロック音程なんか気持ち悪くなります。前にオケでリヒャルトを443でやった時があるのですが、船酔い状態でした。


ピアノの先生の丁寧な指導があったんですね。2つの音を一緒に鳴らして聞き取るということを続けていたら、勝手に絶対音感がついてきました。ただしこれも放っておくと、例えば低音が取れなくなったりします。コンセルバトワールのヴァイオリン科にいたとき、やたら高い音ばかり弾いていたら、バスの音が半音の半音くらい違って聞こえるようになったことがあります。だから私は完全な絶対音感ではないのかもしれませんが、世界の音をドレミで全部表現することはできます。


それで、ヴァイオリンをやっていたおかげで、私の音階は2つあって、ピアノの音階である平均律音階と、すべての音が基準音Aの倍音で計算できる純正率音階。これを使い分けられるようになったのは、パリから帰ってきてからなんですね。パリに7年もいて、ずっと音楽をやっていて、この2つを、私はテキトーに使い分けていたんです。


顕著なのが3度の和音です。例えばドとミの音を一緒に鳴らします。ヴァイオリンで鳴らすときには曇りのない透明な音が出ます。ピアノで弾くと、雑音が入るんです。これが気持ち悪いです。人間、必然的に気持ちのいい方に偏っていくもので、ヴァイオリンで透明な音が響く純正率を身に着けてそれに慣れていました。


でも、このことがよくわからないで、ピアノとヴァイオリンのアンサンブルとかやってたんです。ピアノと合わせるときには、ピアノはその場で調弦できないので、ピアノの音程である平均律の音程で曲を弾かなければいけない。個人で練習していると、純正率に勝手になってしまうのですが、ピアノと合わせるときには、何となくピアノの音に寄せていた…その程度の感覚でした。しかし、ピアノと合わせるためにはそれではいけないんだ…と、日本に帰ってきてこの使い分けをはっきりするようにしました。


このやり方は邪道ですが、一時期は、チューナーにピッタリ音を合わせて音程を取っていく練習をしました。これをやったことで、ヴァイオリンで純正率音階も平均律音階も弾けるようになりました。ピアノと合わせるときもよりきれいにハモれるようになりました。ヴァイオリンは、正しい音程の時に明確に楽器が「鳴る」ので音程の正しさがわかるのです。だからフレッドがついてなくても音程が取れないと言うことはないのです。ただそれは純正率だから、ピアノと合わせるときには、微調整が必要なのです。


ところで、誰かも言っていましたが、絶対音感がある人が必ずしも歌がうまいとは限らないのです。私なんかいい例です。私は歌がとても下手で。ただ、コンセルバトワールのソルフェージュのディプロムの試験の時には歌を褒められたんですが、それはすごく練習したからです。絶対音感があると言うことは、聞こえてくる音がすべてドレミで表せたり、その音が基準となる音階の音よりどのくらい高いか低いかを言えたりするだけで(例えば、ドの音と30Hz違うとか)、歌う時にそれが生かせるかというと、生かすことができません。


今私は試験のために歌の勉強もしているけれど、いきなり見せられた楽譜を初見で歌う時にも、ジャストの音程で始められなくて、つまり喉のコントロールが出来なくて、困ってしまっています。音がずれているのはわかるのですが、音のコントロールができないのです。


なので、カラオケも苦手です。原曲を知っている曲の場合、調が変わると私にとってはそれは「違う曲」なので、さっぱりわからなくなります。まあ、平行移動して歌いきることはできますが、違和感ばかりになります。


試験では、初見でも最初の音はピアノで弾いて確認していいらしいので、絶対音感など必要ないのです。相対音感があれば大丈夫。


宝の持ち腐れですかね、誰かに絶対音感を良心的価格で譲りたいと思ってきました。ヴァイオリンだって最初に調弦してしまえば音程などは楽器が教えてくれるので、絶対音感は逆に邪魔だったりします。


歌うまくなりたいなあ…と思うのですが、こればかりは練習するしかないんでしょうね。絶対音感があるから歌がうまいというのは間違いで、絶対音感がなくても歌がうまい人は山ほどいます。むしろ絶対音感があることでイラつくことが多いです。私の知っている音階の音から外れた音を聴くと、不快感を感じてしまいます。自分が音程を外しているのもよくわかるので、いつも苦い顔をしながら歌っています。ピアノの先生は、もっと口角を上げて歌ってと言いますが、自分の音程の悪さにげんなりして口角が下がってしまいます。先生が言うには、多少音程が外れても元気に楽しく歌えれば合格できますというのですが、その、多少音程が外れると言うことが、ダメなんですね。


歌は練習あるのみ。ご近所さんに聞かれるのは恥ずかしいけれど、頑張って練習します。

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