ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

図説・魔女狩り(ふくろうの本/世界の歴史)

暇に任せてアマゾンしてしまった本ではありますが、私の持っていた疑問に、より明確に答えてくれたのがこの本。
一日で読み終わる量、わかりやすい文章、豊富な図で、楽しく読ませていただきました。


Q1.なぜ魔女狩りは中世真っ只中ではなく、中世後期に発生したか。


A.魔女狩りらしきものは中世を通じて存在した(異端狩りや魔術師狩り、異端審問もその中に入る)。天候を予測すること、それを変えること、占いをすることなどが、魔術師の仕事とされてきた。
ペストの大流行(1350年くらい)によりヨーロッパが混乱に陥った時、ユダヤ人が井戸に毒を入れているといううわさが広まり迫害された。そうしたユダヤ人とキリスト教異端派(カタリ派、ワルド派)を魔女とみなすことで、魔女狩りが盛んになった(最初はごっちゃにされていた)。なのできっかけの一つにペストの流行があることは間違いないと思います。また、同時にヨーロッパ中世社会の停滞ということも、魔女狩り醸造の土壌を作り出したのだと思います。
大きなきっかけは、教皇による、「ユダヤ人とキリスト教徒からなる反キリスト教的な新教派がアルプス西部に存在すること(カタリ派、ワルド派を指すか?)」が指摘され、そちらに異端審問官が差し向けられたことではないかと思います。それが1409年。
1430年ころ、ヨーロッパ最初の魔女狩りが行われたそうです。その後いろいろな書物で魔女が存在することが言われて、適度に魔女弾圧の空気は広がっていったようです。


Q2.なぜ魔女狩りは中世後期で終わってしまったか


A.魔女狩りの盛んになった時期は、1500年代後半の、いわゆる「小氷期」に相当するらしい。地球全体的に温度が低下するこの時期は作物の実りも悪く異常気象も発生する。それが魔女のせいだと思われていた。
特に、辺境の地(中央政府の司法権限の届かないところ)での地元領主の裁判によって魔女認定・処刑される人が増えてきた。ドイツなどはその良い例。小国の乱立状態の中世において、バイエルンのような司法制度の整ったところでは魔女狩りはなかったが、整っていなかった地域では魔女狩りが多かった。
それに対し、科学や、合理主義が徐々に浸透し、中央集権制度も確立していく中で、「神のもとで人間に悪をなす悪魔が、人間と交流することができない」「魔術や魔法といったものはすべて幻である」ということが広まっていき、裁判制度が見直され、魔女裁判が中止されるようになっていく。1791年にフランスで魔女に関する法律が廃止され、魔女狩りの時代は終わります。



魔女狩りが存在した15世紀から18世紀の間には、アメリカ大陸の発見、宗教改革、反宗教改革、30年戦争、フランス革命などもありました。こんなアクティブな時代に、科学も芽生えてきたという時代に、全然確からしくない根拠に基づいて魔女狩りが行われていたのは注目すべき点だと思います。
いわゆるおなじみの、ほうきに乗って空を飛ぶ魔女のイメージは、魔女狩りの初期には確立されており、印刷技術の発展に伴い(グーテンベルクは15世紀)ヨーロッパ各地に広がっていったようです。なので魔女についてヨーロッパ各地で共通するイメージが語られています。書物の影響ってすごいですね。聖書が広まったというプラスの面もありますが、印刷技術は魔女狩りを広めた一つの要因だと私は思います。


ところで魔女というのは女性だけではないのです。前に「女性差別が魔女を生んだ」ということは説明しましたが、魔女として「司祭」が処罰された例もあるのです。例えばフランスのトゥールでは80%が女性の魔女で、その他は男性の魔女だったそうです。近代の魔術師につながるものがありますね。魔術をやる人というのは、いつの時代にも一定数存在していたのだと思います。ただ、キリスト教の教理的に、悪魔と人間が交流することを認めてしまうと、神そのものを否定することになるので(悪魔も神の知っている範囲で動いているという前提がある)、悪魔や魔術はまやかしだという判断がなされてきたわけです。


もう2冊ほど魔女関係の本を読んでみようと思っています。
2冊読んだわけですが、両方とも黒川正剛さんという人が書いた本です。ほかの人の見解も聞きたいし、魔女狩りの時の熱狂と集団ヒステリー的な論を展開した人もいるので、そういう論も読んでみたいし、異端審問、宗教弾圧についてもうちょっと知りたい。中世ヨーロッパは昔から興味があって多方面からいろいろな本を読んだけれど、言われているように文化的低迷期とは私は思っていなくて、華やかな、ロックでソウルなバロック時代も魔女狩りの時代に重なり、バロックの熱狂と魔女狩りは無縁ではないと思っているのです。


歴史の類推は面白いですね。事実が「現在」にあるので、そこにつながるように考えるというのは一種の思考実験ですが、証拠を集めてそれを証明できたら、歴史の面白さが一層増しますね。


歴史たのしー。

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