ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「恐怖と哀愁の内田百閒」東雅夫編

この人の小説を初めて読むのですが、帯に「この世で最も恐ろしい小説を書いた男」とあったのでかなり期待していました。


相変わらず文章が読めない病で、単語はわかるんですが、文章の意味が分からない。展開がどうなっているのか、さっぱりわからないまま読んだから、ちっとも怖くなくて、よほど前に読んだ乱歩の方が「読めて」いたと思います。わかりやすいですし、情景がすぐ浮かんできましたから。


ともかくも、小品ばかり集めてあるのに、その小品の山と谷がわからない。オチがわからない。幻想的な文学作品だとは思うけれど、ヒヤッとする恐怖を感じることはなかったです。三島が絶賛しているけれど、この人よりうまい文章家をたくさん知っているし、怖い話ならもっといっぱいあると思う。それこそ、古典作品の方がずっとひやりとさせられることが多いけれど…。


状況が理解できていないから、怖さがわからないんだ。まだ私の文章読めない病は治っていないようです。


この人から受けた印象は、風と坂と動物虐待。風の描写が多く臨場感があってそんな帝都東京を想像するのは難しくはなかったです。例えば九段坂も今のコンクリートな坂とは違って、もっと道のわきに草がぼうぼうと生えていた土の坂だっただろうと想像できる。そういうところは良く伝わってきた。風の表現はいろいろあって、良く使い分けているなと思ったけれど、写実的で、写生的な感じがしました。風を画にしろって言っても難しいんですがこの人は文章でそれができる。


この方も、芥川と同じく漱石の弟子だったみたいで、芥川の話が一編はいっていて、それは大変興味深かったです。このアンソロジーの本筋からは外れるのですが、睡眠薬でらりってる芥川の生の姿を伝える貴重な記録だったりします。秘密の部屋みたいな2階に仕事場を構えていた様子なんかもよくわかって、人間芥川が見えてきた気がします。


そう言えば、この人は「描写」ということにかけては本当に上手だと思いました。私が崇拝するH先生の文章には描写と感情の縦糸と横糸が綺麗な模様を出していて、読む人を魅了するところがありましたが、この人の文章には、横糸になる感情が抜けている。鼬や犬を虐待している時の気分がわからない。ただ、淡々と虐待しているのです。だから余計怖い。


そうか~。冷静に淡々と、描写だけを純化すれば、ヒヤッとするのか。
なるほど話の筋はわからなくても、幻想的な文学と言われるお化けもの、キツネ付きものなんかもあったけれど、描写があまりに整然としていて、何とも言えない怖さ、いわゆるホラーものじゃないひんやりとした怖さを、確かに感じはしたと思う。


いずれにせよ、悪い時に読んだと思ってます。文章が読めない病中に読んだので本当に読み込めていないし、なぜこのアンソロジスト東雅夫さんがこれほど褒めるのか、三島が絶賛するのかはよくわからない。文章の描写のうまさだけはわかるけれど、それでもそれほど褒めるほどの事かと思ってしまう。


うーん。今回は自分の読書の未熟さを本当に痛感しました。
子供の時に本を全く読まなかったので、なかなかちゃんと読めないのです。面白いものは面白く読めるけれど、人が面白いと言っているものを、私はわからないことが多いです。代わりに、私が惚れ込んだものを、面白がってくれる人は少ない。好みの問題かもしれませんが、私には小説を読む才能の一部が欠けているんだと思います。


やっぱり子供のころから本を読むのは大事です。簡単なジュニア向けの本で構わないのです。昔話でもいいのです。何かしら活字に触れて、頭の中で文字から景色や感情をすぐに再構成できる力は、早いうちにつけるべきなんでしょうね。


というわけで、私にとっては「いうほど面白いか?」な本でした。内田百閒ファンの方には申し訳ない。多分すごい人なんだと思うけれど、今の私には、それを理解することができません。


次はカラマーゾフです。3冊もある…今の私には難題だな…けど頑張ります。

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