ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「皆勤の徒」酉島伝法

いやあーーーー難しかった。
本の帯に『「SFが読みたい!2020年度版」が選ぶ2010年代第一位ベストSF』と書いてあったので、すごく期待していました。SFは最近読んでいなかったので、久しぶりです。


短編集です。いずれも未来の地球や月面世界を書いているのだろうと思うのですが、最初の作品「皆勤の徒」は海の上に突き出した何か建築物で、有機的な袋のようなところから生まれてくる(起きてくる)主人公は隷重類(れいちょうるい)で、その部品を作っている、社長は透明のゲル状の巨大な塊で目も口もなく一応服は着ている…仕事は隷重類の部品をつくるしごとで、お得意様が来て何か発注してあれこれ仕事をしている…そんな様子なのですが、ともかく人が人なのかわからず、想像がつかなくて読みづらかったです。


そもそもこれは人間の話なのか?足が2本手が2本頭が一つの人間の話なのか?
それからいろんな単語が、知っている言葉でも別の漢字で書かれていて、喚起されるイメージがごっちゃになってしまいます。ルビがふってあって、読むとわかるんですが、漢字はより強調されたイメージのものに交換されています。


そんな作品が4作品。もう疲れてしまっていちいち振り返りたくありませんが、これが現代のSFなのかと感心して読み続けてしまいました。昨日は眠れなかったので最後まで一気に。そしてあとがきで、これらの世界が、未来の一つで、ナノマシンの暴走で大災禍に襲われた地球や月の世界のことをかたっているのだということが判明。


最後の「百々似(ももんじ)隊商」ではやっと天降り(あまくだり:時々空から有機的な生き物が降ってくる現象)で降ってきたももんじというのがどんな生き物なのか、概要がつかめて、ふわふわしたお餅みたいな巨大な生物だということが分かって、愛着がわいて私もこの隊商に加わりたいと思ったりもしました。時々ナノマシンの残りがあってそれがそこで生きている人たちに危害を加えたり機能を低下させたりしていましたが、ナノマシンなんて言葉は本編には一度も出てきません。解説に書いてあったからわかったことで、それがなければ、何のことか、本当にわからない本でした。


城が結婚したり、人間だと思っていたら触覚がついていて聴覚はひじについている昆虫としか思えないなりだったり、天降りでいろんな生物が降ってくる中で生活していたり、まともな人間が出てこない不思議な話ばかりでしたが、イメージを作るのに苦労しました。イメージしないで本を読むことはできないので、頭の中で明確に甲虫や昏虫(昆虫)を思い浮かべて、大体こんな形なんだろうなと思いながら苦労して読みました。
なので、1か月もかかってしまったのです。


著者の酉島伝法さんは、1970年生まれで美術学校の出身です。挿絵も自分で書かれているようで、数枚しかありませんが、精密な幻想的な鉛筆画?がありました。それで何となくイメージがつかめたような。


苦労するけれど、読んでみて最後に解説を読むと、そういうことかとわかってとても達成感があります。イメージに乏しい人にはあまり読めないかもしれませんが、有機的な、あるいは昆虫的な、寄生虫的な、人間やロボットではない何かを想像できれば、楽しく読めると思います。


苦労して読んだので次は苦労しないものを読みたいと思い、今度は狂気の科学者の話を読んでいます。はやく「魔の山」にたどり着きたいです。

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