ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「古代オリエントの宗教」青木健

外れな本だったので、悪口ばっかり書きます。


なんじゃこりゃ。
まず、全然古代オリエントじゃないということが問題です。古代オリエントをなんと心得る?オリエントってどこよ、わかってんのかね。そして古代っていつのことを言ってるのさ。オリエントの歴史は紀元前10世紀よりも古いんですけどね、なんですか、この本は紀元後13世紀まで扱ってますね、これ、古代じゃないです。
それに、「聖書ストーリー」という言葉をはやらせたかったのでしょうか。この人のいう聖書ストーリーとは「旧約聖書」+「新約聖書」なんですが、わざわざ聖書ストーリー系の宗教という言い方をしなくても、昔から、アブラハムの宗教っていう言い方があるのになぜそれを使わない?聖書を否定する宗教も「聖書ストーリー」に沿う宗教だと言っているようだけれど、「反アブラハムの宗教」じゃないんですね。


何が書いてあるのかさっぱりわかりませんでした。文章が読みにくい。高度な言葉とか言い回しを使って詩的な気分になって喜んでいるみたい。それ以上に、ある程度宗教学的な背景を持っていない人には暗号解読並みに難しい本だと思います。端折りすぎ、説明なさ過ぎ(いきなり使徒という言葉が出てきて混乱したよ~)、飛躍しすぎ、誰の理論がどうのこうの、という引用は学術論文でやってほしい。


目次を載せておきます。興味を持たれた方は購入するもよし、まあ、私はお勧めしませんけれど。私は批判するならちゃんと読もうと思って、辛い思いをして最後まで読みました。


序章 「聖書ストーリー」と「各民族の神話ストーリー」(ちなみに神話もストーリーという意味があるから、神ストーリーストーリー言うてるようなもんなんよ)
第一章 マンダ教の洗礼主義ー一~二世紀のメソポタミア
第二章 マーニー教のイエス中心主義ー三世紀のメソポタミア
第三章 ペルシアの国教ゾロアスター教ズルヴァーン主義ー三~八世紀のイラン
第四章 ミトラ信仰とアルメニア正当使徒教会ー四~五世紀のアルメニア
第五章 イスラームにおけるグノーシス主義の復活ー八~10世紀のメソポタミア
第六章 「聖書ストーリー」に吸収されたザラトシュトラー九~十三世紀のイラン
終章 「今日、われ(アッラー)は宗教を完成させた」


第六章だけは意味が分かったのでちょっと紹介します。
ザラトシュトラ、とは、ツァラトシュトラ=ゾロアスターのことです。拝火教として有名なゾロアスター教の教祖で、紀元前どのくらいかわかりませんが、ものっそ昔にペルシャでゾロアスター教を作った人です。アーリア人の古い古い宗教です。二元論を特徴としていて、その後の多くの宗教に影響を与えています。ペルシャ人たちは自分たちの宗教だと考えている人が多いみたいですね。
それが。キリスト教徒やイスラム教徒が、ザラトシュトラを聖書の系譜に組み込む理論をあれこれ考えたのだそうです。旧約聖書に出てくる誰それと同じことをしているから、ザラトシュトラは聖書に出てくるこの人だ!みたいな感じで、キリスト教、イスラム教に取り入れられていきます。イスラム教がザラトシュトラを取り入れていたのは有名ですが、キリスト教もやってたわけですね。予言者の一人にしたかったみたいです。
でも、実際には、ザラトシュトラとアブラハムの宗教は、全く関係がないわけです。なぜかザラトシュトラには魅力があったのでしょう、特にイスラム教徒は自分たちの正当な宗教の系譜にザラトシュトラを入れたがっていたようです。ゾロアスター教の方もその気になって、アブラハム=ザラトシュトラとか言い出す始末。おいおいおいおい。みんないいとこどりしすぎだろう。新しい神話を捏造してどうするよ…というのが10~13世紀のころ。イスラム教は積極的に議論を展開して(さすが、中世で停滞していたヨーロッパを置いておいてこの期間に哲学や論理学、宗教学を発展させたイスラム教すごい)何とか説明をつけようとしていたようです。


で、最終章でなんで、アッラーが宗教を完成させたといっているのか、ものっすごく単純なことなのか、それとももっと深い意味があっていっているのか、さっぱりわからなかったのですが、論によれば、それまでシーア派イスラム教がちょっとグノーシス主義的なことをしてみたりいろいろ迷走していたのだけれど「それに刺激されたスンナ派イスラムの成立によって、東方でこれ以上「聖書ストーリー」への擾乱作用が起こる可能性がなくなった」のだそうです。


確かにイスラム成立以後、アブラハムの宗教(旧約聖書、新約聖書)を引き継ぐ宗教は生まれていません。イスラム教は、聖書を聖典にしています。詳しく言えば、旧約聖書を認め、イエスが預言者の一人であることを認め、その系譜の後に、最後の預言者としてムハンマドがいるとしているので、立派なアブラハムの宗教なのです。13世紀くらいで、その辺の宗教的な論争は収まってきましたが、多分それどころじゃなくなってきたんでしょうね、宗派争いやらヨーロッパ諸国との戦争とかで。


まあそんな感じの本です。
解説がいい加減なのは、読後の感想がものっそ悪いからです。


あ、良かった点ありました。文字が大きかった点です。

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