ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「グノーシスー古代キリスト教の<異端思想>」筒井賢治

しんどかったー。読むのがしんどかったー。
かれこれ半月以上かかって読み終わりました。


グノーシスに関する日本人による日本語の入門書?!なのですが、議論が多すぎて、筋がようわからんのです。本の構成も、ちょっと変わっていて、最初に紀元2世紀という時代について、続いてグノーシス主義と言われた3人の宗教者あるいは派閥について説明してから、小さくグノーシスの歴史が書かれてあり、なんというか、概観するにはちょっと専門的すぎて、細分を見るにはちょっと議論が多すぎて次々に繰り広げられる議論のおかげで中心が見えなくなるという。


よっぽどそっちの世界が好きな人じゃないと、読み解けないんじゃないかと思ったりもしました。私はひどい時には一日に1ページも進まなかったりして、かなり苦戦しました。記憶にもあまり残っていません。各所で差し込まれる議論が、すごく邪魔をしていたのです。


いやー偉い学者先生の書かれた本ですから立派なものなのでしょうけれど、そもそもグノーシスって何?って思っている人が手に取る本では少なくともなかったですね。それほど難しかったです。


グノーシスとは何ぞや。というところから入りましょう。キリスト教グノーシス主義というのはよく知られています。キリスト教をはじめとするアブラハムの宗教は、創造神という唯一神を信仰しているのですが、グノーシスの人たちは違います。創造神の上に、至高の神がおられて、キリスト教グノーシス主義の人は、その至高の神がキリストを遣わしたとしています。
また、ペルシャ宗教的二元論も特徴です。この世は悪なるもの、天上世界が善なるもの、という考え方です。悪の世界で悪に染まらないよう清く生活して善なる世界に行きたいね、という感じでしょうか。そういうひとたち、特にキリスト教から派生したグノーシス主義者あるいは宗派が、紀元2世紀、キリストが死んでから100年後くらいにギリシャローマエジプト世界に現れたのです。


それは長く続きませんでした。キリスト教の多数派正統派に淘汰されていった部分もありますが、ほかのカタリ派とかと同じで、現世を悪とする宗教は長続きしないのです。オルフェウス教団とかもそうですね。
ただ、マニ教や、マンダ教など今日につながる宗教(世界宗教と言っていいほどのもの)もグノーシス主義と言えるのだそうです。細々と残っているのですね。


この本によりますと、グノーシス主義というのは
「①この世界、この宇宙は劣悪な創造神が造ったものでこの創造神は善なる至高神と対立的な関係にある」「②人間は創造神の造ったものであるが、その中に至高神に由来する要素がわずかだけ閉じ込められている」「③人間はそのことに気が付かないでいるが、至高神から使いがやってきて、人間に自分の本質を認識せよと促す」ということで、この意味ではキリスト教でなくてもグノーシス主義というのは登場するのです。ただ、この③の神の使いをイエスとするのが、キリスト教グノーシス主義と呼ばれています。グノーシスという言葉の意味は、認知とか、知識といったことのギリシャ語らしいです。


私がこの本を買ったのは、キリスト教のいわゆる異端迫害から魔女狩りへの流れのおおもととなっている思想が、キリスト教が中世で認められる前にあったのかどうかを知りたかったからです。つまり、キリスト教集団が、ちょっと自分たちと違う教えを教える人たちと敵対したり迫害したりしていた歴史があったかどうかを知りたかったのです。異端審問も魔女狩りもキリスト教集団から生まれたものではなく、民間から生まれたものであることは承知しておりますが、どうしてキリスト教徒は自分たちと違うものをそんなにかたくなに守ろうとしていたのか、その芽はもっと古い時代にあったんじゃないかと思って探しているのです。


でもまあそういうことは特になく、2世紀っていうのはまだ混沌としていていろんなものが整っていなかった時代だということがよくわかりました。例えば聖書。新約聖書の成り立ち(あんなにいろんな文書が一つのものにまとまった)というのは、グノーシス主義者マルキオン派が1つの福音書と数通の手紙を一つの「正典」としてまとめたことが始まりになっていると聞いて、グノーシス主義が現在の正統派キリスト教に影響を与えているんだなということがわかったりして、面白かったです。


あと、この時期から、「好奇心」を否定する教えや哲学があったことも驚きです。好奇心の制限はキリスト教が自分たちを守るために行ってきたものだと思っていましたが、2世紀のヘレニズム思想の中に、そうしたアンチ好奇心みたいなものがあったというのはちょっと驚きです。


私はこの時代にも生きられないな…好奇心がよくないこととされるんだったら私なんか真っ先に牢屋に放り込まれるだろうな。


次はもっと軽いライトな本を読もう。疲れた。
12月はあと2冊くらい読めたらいいですね。ともかくここにある本の山を少しでも減らしていかないと、本が買えないです。

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