ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「昭和史」水木しげる

水木しげる全集から、「昭和史」全4巻を読みました。1冊550ページというボリュームで、大判の漫画だったので、持つ手が疲れてしまい、なかなか思うように進みませんでした。もっと薄くしてくれてもよかったんですけどね。でもそれぞれの巻がよくまとまっていて、内容の濃い4冊でした。


1巻は「関東大震災~満州事変」「満州事変~日中全面戦争」
2巻は「日中全面戦争~太平洋戦争開始」「太平洋戦争前半」
3巻は「太平洋戦争後半」「終戦から朝鮮戦争」
4巻は「講和から復興」「高度経済成長期」


すべて書き下ろしで、おそらくお弟子さんの書いた背景が素晴らしい本でした。
私は昭和初期の大衆文化に興味をもっていたので、この本から、少年水木しげるの感じた昭和初期の不穏な雰囲気というのを知ることができました。水木しげる自身がのんきにしていたので、のんきに書かれていますが、要点はしっかり書きこまれています。史実と水木少年の物語が順番に書かれていて、日本の当時の雰囲気や、死生観や、政治的な流れがよくわかりました。


私は満州事変の概略くらいは知っていたつもりですが、この本ではもっと深く、日本と中国のどうにもならない関係が描かれています。これを読むと中国は本当は強い国だったのかもしれないと思うのです。列強からあれだけ搾取されていたのに立派に日本に盾突いた。日本は各地に新政府や傀儡国を作って中国を地域的に支配しようとしたけれど、中国人はそれにずっと従ってきたわけではなかった。日中戦争が15年も長引いたのは、中国のことをよく知らなかった日本の失策もありましたが、中国の強さもあったのではと思ったりしました。これは私が今まで知らなかったことです。


戦争の記述は本当に心に迫るものがありました。実際に水木しげるは南方戦線に従事し、いつ死んでもおかしくないような部隊にいて、マラリアにかかって、そこに空襲で左腕をやられ、マラリアで頭が一寸おかしくなっているところで左手切断、そこにうじがわいて熱が出て、自分用の墓が掘られたことも知らされながらも、何とか一所懸命食べて、食べることで、生き永らえた。おなかがすいたら現地の人と仲良くなって、現地の人にパウロと呼ばれるほどに尊敬され食べ物をいただいていた。その生命力というか、のほほんとした中にある生きる力に圧倒されました。ご本人はその場その場で本能に従って生きてきたんだと思いますが、「食べたい」と思ってそれに忠実な行動をとることで、ちゃんと本土に帰ってこれたというのはすごいなと思いました。食欲がすべての行動原理にあると思いますが、それに加えて運の良さ、人柄の良さも手伝って、何とかなった。すごい。


日本に帰ってきてから待っていたのは貧乏。魚屋をやったり美術学校に行ったりして、紙芝居屋で食べていこうと思うけれどそれも下火になり、貸本屋、それから漫画家。漫画もはじめは売れなかったみたいで借金をしたり質屋に通ったり、家を出ていかなければいけない状況でも出ていかなかったり、いろいろ経験して、そのうち漫画が売れるようになり、アシスタントを7人抱えて多忙な生活を送るようになります。


そういう水木しげるの生活に挟まって、昭和の歴史が語られます。本物そっくりな偉人や有名人の絵が出てきたり、臨場感のある群像の描き方が素晴らしかったり、私は昭和は群像の時代だなと思っているのですが(個人の時代は平成になってから)、それがよく描かれていて、圧倒されました。


昭和にもいろんな事件があったのですね。有名どころの事件はもちろん掲載されていますが、私が知らないような事件も結構たくさんのせられていて、面白かったです。私は昭和生まれですが、「こんな偉い人が生きている時代に私は生まれたんだ!」という驚きもありました。


東西冷戦にも触れていましたが、これは本当にその恐怖を味わった人にしかわからないことがあります。私は子供のころ核戦争を本気でこわがっていて、アメリカとソ連がいつ戦争してもおかしくない、もし戦争が始まったら通信基地のある日本は真っ先にやられる、と周囲から聞いていたおかげで、親に言われるわけでもなく、ひそかに避難物資を準備していました。大事なおもちゃや、大事な服、乾パンや缶詰を袋に入れて、核戦争が来たらこれをもって逃げればいいと思っていたんですが、幼稚な私は「どこに逃げるか」を考えていませんでした。核戦争になったら逃げるところなんてなくなると、今はわかるんですけどね。でも、そういう風に子供心に恐怖心を植え付けられていたので、小学生のころは東西軋轢のニュースを聞くたびに怖くなっていました。
そんな東西冷戦に置いて東川陣営は一枚板ではなかったんですね。これもこの漫画から知りました。ハンガリーなどの国は決してソ連共産党配下に入っていなかった??東西冷戦の東は終始ソ連だけで、西はそれ以外の国だったから、東西冷戦の成り行きは、それが始まった戦後直後から見えていたのではないかなと思ったりします。まあそれは歴史をあとから見た人の言ですけどね。


もっといろいろ掻きたいですが、最近キーボードの打ちすぎで左手の小指が腱鞘炎になってしまい、しんどいのでこの辺で。


水木しげるのシリーズもの、もっと読みたいです。悪魔くんとか読みたいですね。
でもこの「昭和史」に勝るものはないでしょう。
昭和史関係で松本清張も本を書いていますが、歴史の授業では習わない昭和が見えて、私たちはそのベースの上に生まれてきて生活しているんだなあと思ったりします。


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