ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「日影丈吉傑作選」日影丈吉

私の興味のある昭和初期ではないですが、戦後の短編集です。日影丈吉は明治40年の生まれだそうです。
この傑作選には、民俗学的な日本の幽霊や魑魅や物の怪の香りのする短篇や、片や宇宙旅行というか、宇宙に墓参りする話、住民が半分になって死んでしまう不吉な家の話、戦時中の話、台湾の不思議な家の話、自然の森がなくなっていく過程でいろんな幻影を見る話、吸血鬼の話など、一冊に盛沢山でした。ジャンルでいうと何だろう、幻想文学でもあるし、怪奇小説でもあるし、SFでもあるし、推理小説でもあるし、何でもある感じですね。


最初の作品「かむなぎうた」は、本の裏には折口や乱歩も絶賛したと書いてありましたが、私は正直途中で読むのをやめようかと思うほど退屈でしょうがなかったです。でも、少年時代の田舎のガキ大将みたいな登場人物の描き方は群を抜いていて、冗長な文章だなあと感じたけれど、これは最近の人の、「あまり書かない文章」に慣れてしまっているからなのかなと思ったりしています。


私も文章を書く時は、なるべく短く簡潔にと思っています。本当は細部を書きたいけれど、読む人はそういうのでは飽きてしまうだろうからと思って、本当に主語述語くらいしか書かなくなりました。特にBlogを書くようになってから、文章は平易になり、少ない言葉で何とか伝えようとする気持ちが強くなっています。が、この日影丈吉という人は、冗長なんですね。何でも長くずらずらと文章を書く。展開が遅いし、事の起こりもゆっくりで、描写が細かくて途切れがないから集中しないと入っていけない。だから集中して読み込みました。現実がむしゃくしゃしていたからちょうどよかったんですね。


澁澤も種村も絶賛した異端のダンディズム作家、と本の裏面の紹介のところに書かれていますが、ダンディズムかなあ…。最後の作品で出てくる右京という探偵っぽいキャラには惹かれました。国際スパイらしいです。右京シリーズが出ていたら読んでみたい、これも法水鱗太郎や明智小五郎みたいな独特の探偵キャラになったかもしれないと思うのですが、どうなんだろう。


日影丈吉は初めて読んだので、私を驚かすキャパシティは計り知れないと思っています。これ以外の本も、そのうち買ってみようと思います。
まだまだ私の知らない面白い作家はいるんだなあ…。現代の本はほとんど読みませんが、昭和初期中期の混乱の時代を生き抜いた人たちの作品には日本人らしい悲哀がある。そこが私は好きですね。乱歩にしろ、横溝にしろ、ただの探偵小説の面白さだけではなく、日本や日本の制度や風土、日本人魂が戦中の混乱の中で純化された、なんというかこう、日本人の持つ明るい悲しみみたいなものを筆の中にこめているのがわかるんですよね。


話はだいぶずれましたが、昭和初期文学を読んだので今度はまたヨーロッパ史関係の本に戻ろうと思います。こうやって読書に逃げている時間が一番幸せです。


あ、本読んでてピアノ練習するの忘れた。あちゃー。明日やろう。明日はスポーツクラブだけど。

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