ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「法水鱗太郎全短篇集」小栗虫太郎

難しかった…。2週間もかかりました。
何が難しいって、言葉が難しい。相当高度な教養がないと読み切れない難解な単語が多く、仏教用語とか、あらゆる外国語とか、科学用語とか、いろんな世界に通じていないととても読み解けたものではないと思いました。


法水鱗太郎というのは、小栗虫太郎の小説に登場する探偵の名前で、彼がばっさばっさと活躍して事件を解決に導くのだけれど、鮮やかな大大円となる話ばかりではなく、犯人がわかってもまだ死者が出たりするような、ちょっともの悲しい話もある。
それから、畸形を扱ったり、頼病を扱ったものもある。その死蝋なんかも出てくる(そんな時代もあったんですね)。それから、ハムレットにジークフリート、ロシア正教に海賊。いろいろな分野が出てきて、これは相当教養がないと楽しめないぞとこちらも気合を入れて読んだのですが、トリックに化学や医学の知識が応用されたものが多く、さっぱりわかりませんでした。


私が理解できたのは1つか2つくらいで、多くの話は理解不能な難しさがありました。時々、もう小栗虫太郎は読まないぞと思うくらい、難しくややこしく、なんというか、登場人物の個性も光らないし、いつも出てくる刑事も出てこないし、もうだめだ、とおもった話もありました。


でも、これはトリックがわかると実に面白いというか、多面的で、インテリ向きの本なのではないかと思いました。私は残念ながら根気がなくてトリックのすべてを理解することができませんでしたが、ところどころ出てくる興味深い知識に、おっ?と思わせられるところがたくさんあり、やっぱり小栗虫太郎を味わうために、再度「黒死館殺人事件」を読むべきだなと思ったりしました。


私は昭和初期の大衆小説の研究が一つのライフワークになっていて、特に「新青年」という雑誌に掲載された作家さんの作品をいろいろ読んでいるのですが、小栗虫太郎はずば抜けて面白いと思います。この短篇集も、最初の方は読みにくかった。難しい単語いっぱいで、昔の人は語彙が豊富だなあと思ったものでした。後半の作品になるにつれてスイスイ進むようになり、トリックが覆されたりしたこともあって、ちょっとスリルがあって面白くなってきました。
小栗虫太郎に欠けているたった一つのことは、小説の中に彼なりの人生観や日本人観が現れないことです。同時代かちょっと前の大衆小説、横溝や江戸川乱歩の作品には、それぞれ人生観がまちがいなく表れていました。だから深みがあるというか、今読みなおしても納得できるのですが、それに比べると小栗虫太郎は知識の羅列に終始し、おもしろいんですが、それ以上ではない。


でも、「黒死館」は格別で、この作品は人生観が現れているし、思索の深さも素晴らしいし、また読んでみたいと思います。
ともかく今は、読み通して疲れたという気持ちでいっぱいなので、これからはちょっとライトな本を読もうと思います。日本語が簡単な本を読みたいです。


あ。そうだ、アマゾンで3冊買うと8%もポイントが付くというキャンペーンをやっているので、本を買いたいですが、3冊が決まらない…決まらないときは無理して買わないほうがいいんでしょう。商業戦略にのせられてはいけない、今ある本を読むだけでも一年くらいは本を買わなくて足りるのに、わざわざ増やすことはないか。
とりあえず、アーサー王か、ケルト神話か…。ジャン・ジュネも読んでないのがあるけれど、訳が微妙で読みにくく、今はとても疲れているので疲れない本を読みたいです。


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