ひまわり畑を夢見るブログ

44歳の時、乳がんの診断。ステージ2。手術して抗がん剤とホルモン治療。仕事と治療の両立の生活記録を残します。

「黄色い部屋の秘密」ガストン・ルル―

面接の準備もせずに一気読みしてしまいました。


大体1週間くらいかかりましたかね。
この作品は、1905年くらいに発表された、「完全密室犯罪ミステリ」の古典的作品で、のちの多くのミステリーに影響を与えた傑作なのです。
大変面白かったです。ある女性が「黄色い部屋」といわれる完全密室で殺されかけるという話なのですが、密室的表現はそれ以後2回出て来ました。4人で張り込みをしていて犯人を4方向から追い詰めたと思ったら消えていなくなってしまった件と、犯人が逃げていくのを狙撃したつもりが、死んだのは犯人ではなく、死んだのも拳銃によるものではなく、しかもそこは3方を囲まれていて、まるで本当の犯人が消えてしまった件です。


この物語に「父殺し」の側面があるとあとがきにありましたが、そんなこと気にしなくても、単純にミステリーとして楽しめます。どうしてマチルド嬢が殺されそうになったのか、どうして「本当のこと」を言わなかったのか、言えなかったのか、それがこの作品の設定された「15年後」に明らかになったことなど、追いかけていくと全くよくできた作品だと思います。


私はここでまた新しいフランス語を知りました。フィユトン、というジャンルというか、形式です。これは、19世紀に生まれた新聞連載小説のことだそうで、冒険活劇、メロドラマなど、大衆受けしそうな話が多く、この「黄色い部屋の秘密」もその一つであったそうです。新聞連載の面白いところは、次の出版を期待させるつながりがあるところです。まったくこの小説にはそういう意味で次々読みたくなる仕掛けがたくさんされていました。そして、すべて語らずとも、全体の意味が分かってしまう(その想像力があればの話ですが)楽しさがあります。結局犯人は思いがけない人物だったわけですが、それも当時の歴史的背景を知っていれば(当時はやった犯罪者とか犯罪とか)、想像にたやすくないみたいですね。


ガストン・ルルーは「オペラ座の怪人」が有名ですね。私はそちらは読んだことがありませんが、きっと読者を裏切らない、ワクワク感いっぱいの作品なのでしょうね。
他にルールタビーユ(この作品の謎解きをした新聞記者)の話はフランスではある程度発行されているようで、日本では「黄色い部屋の秘密」ともう一作品くらいは訳されているらしいですが、もっとフランスの大衆文学に光が当たって、ほかの作品も翻訳されるといいなと思っています。


この作品のフランス語版も読んでいます。簡略版ですが。でも簡略版だとキャラクターがわからなくて、怖さも伝わってこないので、日本語訳を読んでよかったなと思っています。


本格ミステリー好きな人には物足りないかもしれませんが、これが1905年に出版されたものだと考えれば(コナンドイルと一緒くらいの時代?)、なかなかな作品だと思えるのではないでしょうか。



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