「悪徳の栄え」サド
ふー。
やっと読み終わった。3週間かかりました。
上巻の退屈さに加え、どんな淫蕩も、殺人も、語られるだけで私の心に来ることはなく、淡々と繰り返されるだけで、悲惨な状況が書かれるに及んでも、全然怖くないというか、恐ろしくないというか、悪徳を感じなかったんです。
下巻になると様々な悪事の遍歴の記述となり、淫蕩、悪行、裏切り、殺人、まあまあよくも飽きもせずこれだけ書いたものだと感心してしまいました。下巻のほうがすらすら読めましたが、相変わらず恐ろしさとか怖さとか恥じらいを覚えることはありませんでした。
サドってこんな退屈だったっけ?
主張としては「人間の自然こそが悪徳である」ということです。その悪徳を尽くして親友を裏切ったり娘を殺してしまったりする主人公ジュリエットの心中がなかなかうまく表現されていなくて、より冷酷な人間であることを想像させるのですが、うーん。
エロスや悪徳の、目も当てられない記述ならば、レアージュやバタイユのほうが数段上なんじゃないかと思ったりします。
サドはサディズムの語源になっていますが、うーん、それほど加虐的か?めちゃめちゃではあるけれど、なんというかしっかりした哲学に根差しているから、バタイユほど破天荒ではないような気がします。悪徳に殉じる主人公の遍歴を淡々と描いただけだった感じですね。
例えば犠牲者の目をくりぬくところも、さらっと「目をくりぬいた」としか書いていなくて、どうやってくりぬいたか、その時の犠牲者の様子などが書かれていなくて、怖くもなんともなかったんです。こういう点については、被害者の様子をちゃんと書いてくれた方が、怖さや恐ろしさ、嫌悪感が増したでしょう。
ちょっと現実がつらい状況にあったので読書も進まなかったんですが、現実がうまくいっていないときはもっと明るい本を読むべきですね。人に二心ありというのはこの本を読んでいてよくわかりました。私もそのくらい悪い人になって上司を裏切らないといけないと思っています。さくっと新しい職を決めて、どーんと退職願を出されて驚く上司の顔を思い浮かべております。
次は明るい本を読みましょう。